経済学はなぜ共通の理解にならないのか
アメリカは世界で最も経済学の進んだ国であろう。そしてそれはアメリカの大学で教えられている。したがって最も進んでいる経済学はアメリカの国会議員にも浸透していて良いはずだ。そうだとすれば今回の金融恐慌に起因するアメリカ経済の沈滞に対するアメリカ政府がとるべき対応について、当然民主党と共和党との間で大きな意見の相違が起きるはずがないと考えてもおかしくないと思うのだが、実際には共和党の議員たちは民主党が作成した多額の政府支出を伴う経済対策案に揃って反対した。共和党の議員たちには、かつて1930年代のアメリカの大恐慌のときに、政府は市場に介入するべきではないとした古典派の経済学に基づく対応の考え方が、今日もなおしっかりと居座っているようだ。しかも近年は「市場原理主義」の考えがが猛威を振るっていたから、尚更なのであろう。
ところで私には、市場原理主義の考え方は、自分では具体的には何も考える必要がない思考停止の便利なイデオロギーでしかないと私には思われのである。市場に任せておけば経済行為はすべて最も効率良く遂行されるのだから、政府は市場に余計な干渉をするべきではないと考えるのが市場原理主義であるが、経済活動のレベルが急降下している現在、共和党の議員たちがそのようにのんきに考えることができるのは、そもそも彼らが職を失って喰うのに困ることなどない立場にいる金持ち連中だからなのではないか。今回の金融危機が起きたのも、彼らの信奉する市場の結果だとは彼らは考えないのである。彼ら共和党の議員たちは実際に起こった出来事には眼を閉じて見ようとせず、何も考えなくてよい「すべてを市場に任せるのが一番いいのだ」というイデオロギーに侵されている能天気な連中なのである。
私は日本の政治家も不勉強だと思うのだが、アメリカの政治家も大して変わらないようである。キリスト教がアメリカ国民に圧倒的に刷り込まれているイデオロギーであるのと同じように、市場原理主義もアメリカ人に根強く居座っているイデオロギーであって、経済学が進歩しても、そんなこととは無関係に、不勉強な政治家たちの頭から離れることはないのだ。市場原理主義は、自分たちが住んでいるのは「市場という全能の神」が支配する理想郷であると信じることであって、宗教を信仰する人が現実に起こっていることの原因から目をそらして、この世に起こっている現実はすべて神の意思の現れだとする信仰という思考停止を選択するのと同じイデオロギー現象なのだと私には思われるのである。
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